いつも、具体的にご質問くださり、そうなんだ、そのような事を患者さんは疑問に思われているんだな、と感じさせていただいております。自分では、かなり説明ができている医者のつもりでおりましたので反省しきりです。ありがとうございます。今までにご質問いただいたことを以下にまとめてみました。
@診断名と治療方針;
これについては、初診時か2回目までにはおおよそお示しできていると思います。大まかな治療方針と次回の予約の必要性の有無もお示ししております。
発達障害の範疇の、その方の特性か障害か決められない状態や、うつ病と言えるかどうかはっきりできない境界的な状態の場合などは、そのようにお伝えしながら、治療を要すか否かの考えを述べさせてもらっております。妄想かどうかもはっきりしない方もおられて、こんな状況になったら是非またおいで下さい、で処方なしで初回診察を終了する場合もございます。病名が付けられなくとも兎も角早急に困った症状を軽減させねばならないこともございます。その辺りの事を患者さんと医師は疎通し合う必要が有り、特に努力はさせていただいております。(まだまだ足りないのかも知れませんが)
A薬の必要性の有無、増量・変更・上乗せの可能性の見通し;
治療計画の大まかな話はさせていただいていますが、問題の症状が軽快しているのに1ケ月経過しても「同じように服薬してください。」と医師が申し上げると、「え?まだ飲むのですか?」と言う方がいます。風邪のお薬しか使用されたことの無いあなたにはそりゃあそうでしたね。申し訳なく思っております。良くなったからと言って、さっさとお薬を引き上げると、また再燃することもあります。特に環境・状況要因からうつ状態になられた方は、その環境・状況がある程度落ち着くまで、その環境に耐えられる力が十分蓄えられるまでは、当分服薬の必要があるわけです。服薬は必要ないが通院診察だけは「もうしばらく」必要な場合もあります。
またある処方薬については、最初からは必要充分な量を処方しないことも多いです。徐々に有効用量に上げていく計画でおります時には、「どんどん薬の量が多くなる」恐怖・不満が起こらないようその計画を予め丁寧にご説明するよう心掛けておるところです。
精神科医が「当分の間飲んでいただきます」と言う「当分」は数か月から数年の意味であることも多いです。統合失調症や躁うつ病の治療薬は、幻覚妄想・興奮が消失しても、まだまだ「当分の間」長期年月の服用の必要性が有るとお考えください。病気休養後の再就職・再就学の時には一層の慎重な減量・中止を要します。飛行機も離陸の時が一番危険なのと同じで、再出発の旅立ちの時には焦った減薬中止は禁物だと考えております。順調に安定期を迎えられましたら、維持量に減薬し、それでも「当分の間」飲んでいただくことが多いです。
Bアルコールと薬の飲み合わせについて;
ほとんどのお薬はアルコールと一緒に飲まないで下さいと言われています。いつものアルコール量でも酔いが強く出ることが多いようです。アルコールの量にも個人差が有ると思います。ここは主治医にご相談ください。
アルコールでも薬でも、何種類かを同時に服用しますと、それらを分解する仕事をする「血液中の分解酵素」があっちもこっちも分解しなくてはならず、忙しく手が足らない、→分解できない→薬が長く身体に残る、と言うことにもなります。限られている量の分解酵素の奪い合いが起こるのです。それはサプリメントや食品の分解の際にも起こり得るので、服薬治療中に、どうでもいい?サプリは安易には飲まれないことをお勧めします。逆に、ある薬・食品が「分解酵素の分解を邪魔する」ということが起こることもあります。分解酵素が分解されない→分解酵素の力がいつまでも働いて→服用中のお薬がガンガンいつまでも分解され続けて→薬の効力が落ちる、ということもおこることがあります。ややこしいお話でしたね。
今の医学ではまだまだ飲み合わせのほとんどが解明されてはいないことを考えますと、老化して多種の必要なお薬を使用している我々には、身体の中ではっきりわからないことが起こっている可能性も有るわけです。必要不可欠最低限のお薬を選別し、様子を見ながらゆっくりと選択・増減・変更を考えて行かねばなりません。他科の病気の治療薬も必要なその上に、自分勝手なサプリの服用は、益より害が多い気がします。とは申せ、現在分かっている「不適切な薬の飲み合わせ」もありますので、他科のお薬情報はお薬手帳を1本化して、必ず主治医や薬剤師にお見せ下さい。
C屯用薬を使って、やり過ごすことの是非;
パニック発作(動悸、喉のつまり感、手のしびれ、嘔吐等)や頭痛、不眠、過敏性大腸症などはその時だけ、定期薬とは別物の頓服薬を上乗せして使用することが有ります。必要な時は遠慮しないで使い、良くなれば速やかに使用を中止できるものを選別します。屯服の使用がどんどん頻回になってくる場合には、基本になっている定期薬がうまく身体に合っていないかも知れませんので、処方を考え直さないといけないこともあります。頓服をどんな頻度で使用する必要があるのか、患者さんと医師はきちんと2人3脚でやっていかねばなりません。その為には何よりも双方が話のしやすい関係を築くことですね。双方の相性も有りますでしょうか。今回の質問者が、寛容で積極的で理知的な方であったことに私は随分救われております。ご指摘を受ける前にご説明の出来る医者にならねばと思っております。どうか今後もご鞭撻ください。医者は患者に育てられていると日々感じております。
Dそして、味野医院をめでたく卒業はしたものの、再発したり、別の症状が出現した場合には;
どうかその時には味野医院予約専用電話にご一報ください。過去のデーターが残っておりますので、それを活用することで、次の治療もスムーズにできると思います。この時、不幸にも治療関係がうまくいっていないとお考えの方は、味野医院を見限って他の医療機関に流れて行かれることになりますでしょうか。長い一生の中で、良い出会いと別れができる味野医院でありたい、家族に何かあった時にはまた相談したいと思っていただける味野医院でありたい、と考えております。